人間とウェブの未来

「ウェブの歴史は人類の歴史の繰り返し」という観点から色々勉強しています。

オライリー・ジャパン Serverspec書評 - Serverspec及びSpecinfraの究極の目標とは

mizzyさんの執筆されたオライリー・ジャパンのServerspec本を頂きました。ありがとうございます。そして、執筆お疲れ様でした。

実際の発売日は2015年1月17日です。素晴らしい本ですので、是非ともご購入されてみてはと思います。

Serverspec本の感想を書こうかと思ったのですが、技術者目線での素晴らしいレビューは既に幾つか書かれており、僕が同じような内容を書いてもやっぱり似たような感想になってしまうので、このエントリでは、「Serverspec本のどこが素晴らしいのか?」について、研究者視点で簡単に紹介したいと思います。

その前に軽く技術者視点で

Serverspec本は、2章と3章でServerspecの最初の一歩から、より本格的に使うための方法について書かれています。また、Serverspecの思想の一つとして、最低限のシンプルな実装にしておき、自分で色々カスタマイズしたい場合は自分で弄って下さい、という考え方があり、4章では自分でServerspecを色々弄りたい場合に知る必要のある内部仕様が書かれています。また、5章では他のツールの連携方法や、6章ではトラブルシューティングやデバッグの仕方が書かれています。

つまり、

  • Serverspecをとりあえず動かして運用してみたい人は、2章3章6章を読む
  • Serverpsecを既にひと通り弄っていてより自分の使い方にカスタマイズしたい人は、4章を読む
  • Serverspecと他ツールの連携やServerspecをシステムの一つとして導入したい人は、5章を読む

という読み方でも、十分にServerspecのシンプルさや利便性を体験できるのではないかと思います。これに当てはまるだけでも、とりあえず購入することをおすすめします。

オライリーの本にしては2800円と安めで、分厚さもA5サイズの1センチぐらいなので気軽に読み通すこともできるし、必要な時に開いて確認するのにも適切な分量だと思います。もちろん、寝ながら見る事もできるサイズです。

研究者として僕が特に読んで欲しいと思う所

自社のサービスの効率化や、あくまで仕事として便利にServerspecを扱うという意味では、上記の読み方でも十分だと思っています。

ですが、研究者として見た時に、Serverspecの素晴らしさは他にもあって、そこは是非とも皆さんに理解して頂きたいと思うのです。

それは、

  • 1.8節 Serverspecの究極の目的
  • 7章 Serverspecの今後

です。

ここに書かれている内容は、Serverspecの本質とは一体何なのか、そして、Serverspecを支える基盤ソフトウェアであるSpecinfraとは一体何なのかについて書かれています。これまで、関連研究でServerspecと似たようなConfiguration Management Toolsは沢山発表されてきました。そして、Serverspecはそれらのツールの多様性の一つであり、単にシンプルで使いやすくしたものである、と

思っていただきたく無いのです。

これまでの関連研究と大きく違う、Specinfraによる運用業務の抽象化、そして、その業務の一つとしてのサーバの状態のテストを具現化したServerspec、と考えた時に、mizzyさんの目指すこれらのソフトウェアの方向性は、単なる構成管理や状態のテストだけではないのです。

Webサービスは高度化し、それを支える基盤技術やシステム構成はますます複雑化してきており、それらを適切に運用する技術もまた日々高度になってきています。これらを解決するための運用技術者を適切に教育することも、技術の進化の速さとシステムの複雑化によって、非常に困難になってきているでしょう。

ですが、このServerspecを含めたソフトウェアが、この科学技術が進みすぎた時代に、運用技術という面で一つの答えを導きだすのではないかと思います。

そういう視点で上記の節や章を読んだ時に、きっとServersepcの本質やmizzyさんの思想を理解でき、それと同時に心の中に熱い何かが湧き上がってくるでしょう。それらを理解した上でServerspecやSpecinfraを扱う事で、ソフトウェアの面白さや利便性だけでなく、今後システムをどういう方向性で設計し構築していくべきかが、朧げに浮かんでくるかもしれません。また、個人的に使ってみたくなったり、ソフトウェアとしての魅力からパッチを送るなどして、世界を変えるかもしれないソフトウェアに貢献したくなるでしょう。

そういう意味で、上記に挙げたこの本の思想に関わる部分は是非とも読んで頂きたいと思うのです。

まとめ

ということで、簡単ではありますが、技術者としてのちょっとした紹介と、研究者としてServerspecに共感した部分、mizzyさんの思想に熱いものを感じた理由を書いてみました。

そして、是非ともインフラ運用に関わるエンジニアの皆様にも、Serverspecのソフトウェアの利点だけでなく、そこから溢れだす思想を感じて頂いて、その上で、さらにServerspecやSpecinfraをより便利に使って頂けたらと思います。

そのためには、この本がきっと必要になるでしょう。