新型コロナウィルスの影響によって、急激に働き方が変わってきた。コロナ禍の初期、大体1年目においては、まだタイトルのような「家族やプライベートを犠牲にして仕事や実績を得ていた」ことから目をそむけることができていたし、なんとなくモヤモヤしていたけれど、そのような考えにある種至っていないような感覚であった。
コロナ禍の初期は、働き方が一気にオフラインからオンラインになって、出張や勤務など多くの時間的な制約から解き放たれ、随分と様々なオンラインの取り組みやコミュニケーションに参加しやすくなった。また、そのタイミングで僕はInfraStudyと呼んでいる大規模オンライン勉強会を企画し、運営してきた。
そういった様々なオンライン上の取り組みの中で「オフラインだったら夜の勉強会や懇親会に参加できるけれど、オンラインだったら家族もいるし難しい」といったような話を聞くことが増えてきた。その時僕は、正直、なぜ外に出ればOKでオンラインだとNGなのか、ということについてうまく理解できていなかった。というのも、外に出て勉強会や飲み会に参加していたとしても、その間家族に負担をかけているだろうから、それがオンラインになっても、同じように調整さえすれば変わらないんじゃないかとまで思っていたからだ。しかし、今となってはここ一年の活動や様々な人との会話の中でそれが根本的に誤った認識であったことに気付かされた。(以下、この話は僕が属するインターネット技術やWebサービスなどの業界での取り組みを前提としており、どこまで一般化できるかは検討はまだしていませんので、それを前提に御覧いただけると幸いです。)
まず大前提として、出張に行ったり、勉強会に行ったり、あるいは、飲み会や懇親会にいくために外に出ている時間は、小さな子供達がいれば必ずその子供達を見てくれている人がいる。プライベートの時間の観点でも、仕事が終わったあとの自由な時間をさらに残業的にスキルを高めるための仕事に費やしているだけであって、外に出ていればそういった様々な現実から目をそむけることができていただけだった。
そんな中、コロナ禍となりオンラインで仕事をする中で、自分が勉強会に行ったり出張に行ったりしている時のようにオンラインで仕事をしている傍ら、育児や家事などの家庭内の現実を近くで常に目の当たりにし始めた。それによって、そもそも今までのように業務後の勉強会などのための取り組みを家族と調整すること自体も、もっと頻度を下げないといけないと早くから直感的に感じた人が多かったのだろう。家族に負担をかけるという意味では、外に行けたら参加できるけれど、家では参加できないという論理自体は矛盾しているのだが、直感的にそもそも家族への負担を減らさないといけないとか、家族の横で盛り上がるわけにはいかないなどと考えた人達がオンラインだと参加が難しいと答えていたのかもしれない。外に出たところで家庭への負担は根本的に変わらないので、結局のところ、そもそもこの業界で業務後の勉強会やイベント参加、夜の追加のスキルアップのための勉強などが当たり前になりすぎていたのだと、リモートワークを通して随分と認識できたのであった。
実際に夕方以降にオンラインでMTGをしたりイベントをしたりしていると、その間、例えば小さい子供がいる場合は、夕食以降寝かしつけるまでやることが沢山ある。さらに、オンラインで話をしていることに家族が気を使って、これまで以上に子供達に注意をする必要があり、そういった追加の負担やストレスを家族に押し付けているだけに過ぎないのである。
ここで、タイトルにあるように、自分は家族やプライベートを犠牲にして仕事や実績を得ていたことから目を背けていただけで、それを近くで目の当たりにすると、思ってた以上の負担であったり、家族との時間をもっと大切にしたいという思いから、現実を深く認識するようになり、目を背けることができなくなったのである。そういう理由もあって、最初は家でオンラインで仕事をするだけでも家族により負担をかけると思って、安い賃貸を別でかりて仕事をしていた。しかし、妻が妊娠したことや、こういう現実を目の当たりにして、自分が目を背けていただけであったことを反省し、多少高くても家のすぐ隣にあり、いつでも妻や子供が徒歩2、3分で行けるようなマンションに引っ越しして、そこをプライベートオフィスとした。
その上で、できるだけ子どもたちの幼稚園や小学校の活動時間と同じ時間に仕事をするようにし、お昼はシュッと家に帰って妻や家族とご飯を食べたり、少なくとも夕食時間以降には家にいられるようにしたりしている。妻がどこかにでかけたいときには、プライベートオフィスで子供と一緒にいたり、僕自身が家にすぐ帰ることもできるようになった。子供が帰ってくる時間にたまたま妻がいられなくても、子供たちが直接プライベートオフィスに帰ってこれるようにもなった。
部屋が違ったとしても家の中でオンラインで仕事をすることに対する家族の気遣いやストレスも、プライベートオフィスという近いけれど物理的に違う場所で仕事をできるようになり、解決できるようになってきた。子供を叱らないといけない状況とかになっても、妻一人でそういうことをしなくてすむように、できるだけ一緒にいてその辺りお互いやりすぎないように協力できるようにもなってきた。
また、当たり前なのだけど、たまに土日とかは小さな旅行的にプライベートオフィスに一緒にいって家族とゆっくり遊んだりしながら、ご飯や家事は自分が担当するようにしている。家にいると、なんとなく妻がやってくれることに甘えてサボりがちになるのだけど、少なくとも土日にちょっとした遊びがてらプライベートオフィスで寝泊まりすると、自分のオフィスだから自分がやらないといけないなと甘えないようにご飯を作ったり家事ができるのは意外な良い効果でもあった。
今後は、自分が関わるイベントも改めて見直そうと考えている。当たり前にオンラインで勉強会が19時以降にあったりする上に、最近はオンラインという特性もあって数も非常に増えてきている。そもそも、それらを実現するために、エンジニアや運営の皆さんは、プライベートの時間を削ったり、残業に近いレベルで参加されてる人が多いだろう。そもそもこのような取り組み自体、基本的にはオンライン・オフラインに関わらず、家族やプライベートに大きな負担をかけながらなんとか取り組み頂いている話だと理解している。そうであれば、運営や参加者がもっと家族やプライベートの時間も大事にできるようにしていきたいとも思えるようになってきた。
我々の業界では、会社内で業務時間に勉強会を開催したり、業務としてのインプット・アウトプット活動、あるいは、大きなカンファレンスであれば業務として参加することが徐々にできるようになってきている。会社の持続的な成長の観点でも、それらはとても良い取り組みだと思うので、コロナ禍の経験や振り返りを糧にして、こういったオンラインイベントやコミュニティ活動を企業とより密に連携して、例えば、昼の14時や15時あたりから2時間勉強会を実施するとか、そういった方向で業界を巻き込んでいけるんじゃないかと思って動き始めている。そしてこれは、本質的にコロナが収まってオフラインイベントが増えてきたとしても同様だと考えられるため、当然オフラインの勉強会も昼過ぎに開始してもおかしくないと思っている。
ということで、僕自身がコロナ禍の中で初期から今に至るまで、タイトルにあるように家族やプライベートを犠牲にして仕事や実績を得ていたことから目を背けられなくなった件について、ざっと忘れないように書いてみた。これまでは上述してきたような勉強会やスキルの研鑽などを業務外の時間や残業としてやることが当たり前だったのかもしれないけれど、そもそも、これまでの基準や頻度で業務後にあれこれイベントに参加したりすることが正しかったのかは、ちゃんと振り返りながら多角的に議論していきたい。業務時間でやる場合の様々な障壁もあるはずで、それは今後実際に自分が関わるイベントなどでトライして、ブラッシュアップしていきたいと思っている。
編集後記
公開前にこの犠牲という言葉も強すぎると思って何か良い言い方がないかしばらく考えたのですが思い付かず、おそらく指摘も入りそうでその辺り踏まえて考えようと思ったのと、ある意味強い反省の意味も込めて、本文読めばニュアンスがわかるかもしれないと思ってそのままにしたのでした。正直反省してます…
公開前にこの犠牲という言葉も強すぎると思って何か良い言い方がないかしばらく考えたのですが思い付かず、おそらく指摘も入りそうでその辺り踏まえて考えようと思ったのと、ある意味強い反省の意味も込めて、本文読めばニュアンスがわかるかもしれないと思ってそのままにしたのでした。反省してます…
— まつもとりー / Ryosuke Matsumoto (@matsumotory) 2021年11月12日
- 2021/11/12 23:51
ブコメを見ながらタイトルや文章を修正しました。ありがとうございます。
- 2021/11/13 15:24
ぜひこちらのツイートのスレッドも補足的に読んでいただけると幸いです。
昨日のエントリは、現状の勉強会やスキルアップの取り組みが全体として夕方以降になっていることが多く、それが当たり前になっているので、改めてコロナ禍のオンラインの取り組みから明らかになったことも含めて、もっと様々な境遇の人が参加できる枠組みを業界とコミュニティ巻き込んで再設計していき
— まつもとりー / Ryosuke Matsumoto (@matsumotory) 2021年11月13日
- 2021/11/13 23:23
僕の文章が酷くて伝えたかったことが変に伝わってしまったケースがあったので、サマリーをツイッターのスレッドでまとめています。ぜひ最後に御覧ください。
昨日のエントリは、今家族の負担に気づいたということではなく、分担して仕事と育児をする中で、仕事の時間外での勉強会やスキル研鑽が求められるケースが多かったので、フェアに考えてそれを前提とするのではなく、より協力してそれぞれが求める機会を得られるように再設計したいという話ですね
— まつもとりー / Ryosuke Matsumoto (@matsumotory) 2021年11月13日