人間とウェブの未来

「ウェブの歴史は人類の歴史の繰り返し」という観点から色々勉強しています。

エンジニア個人が自主的に成長するように促す - エンジニア組織の自律的成長

この記事は、Pepabo Managers Advent Calendar 2016の3日目の記事です。2日目は、弊社チーフエンジニアhsbtさんの「マネージャが仕事の仕組みを作る」でした。

僕自身は、エンジニア専門職の主席研究員兼シニア・プリンシパルエンジニアではありますが、特にペパボ福岡のエンジニア組織を現場でまとめる人間として、エンジニア組織を成長させる中で個々のエンジニアの成長をサポートしているという意味では、マネージメントに関する活動も兼ねております。

しばしば、インターネットサービスの高度化と複雑化の速度が早過ぎるため、グランドデザインができない、人が多過ぎても成立しない、少な過ぎても難しい、とういうような類のサービスを作り上げないといけない状況があります。その際に、厳密過ぎない役割を持たせ、それぞれが横断的にそれぞれのスタイルで、まるで、攻殻機動隊の世界におけるスタンドプレーから生じるチームワーク、そして、非効率性から人を育て、最大限の効率を生み出す組織が求められることが今後増えてくるだろうと予想しています。

そこで、僕は最近「エンジニア組織が自律的に成長するように促す」というテーマを元に行動しており、その中で常に頭の中で意識している事は、

  1. エンジニア個人が自主的に成長するように促す
  2. エンジニアが自分の技術を客観的に評価できるようにする
  3. エンジニアが自分の技術に誇りを持てるようにする

です。

今日はこの3つの内、1つ目の「エンジニア個人が自主的に成長するように促す」について詳しくお話したいと思います。今後気分が高まれば、2つ目、3つ目についても別エントリで言及します。

エンジニア個人が自主的に成長するように促す

エンジニアといっても、僕のように技術を学んだり研究したりすることが大好きで、仕事と関係ないところでもひたすら学び続けるような人間もいますが、全員がそういうわけではありません。そのため、仕事の中で「もっと技術を好きになれ」と言われた所で、やはり心には響かないでしょう。では、そういう人たちが、仕事をしながら技術力を自主的に成長するように促すにはどうすれば良いのでしょうか。

僕自身は、以下の3つの取り組み方をしています。

  • 技術的解決の面白さを伝える
  • 仕事を任せ、成功体験をして頂く
  • 促す側がエンジニアの仕事の仕方として理想である姿を見せる

技術的解決の面白さを伝える

まずは、「技術的解決の面白さを伝える」ですが、これは非常にありきたりではりますが大切な要素の一つです。エンジニアに対して仕事だから技術的成長をしてほしいと伝えたところで、一時的な成長はあってもそれは継続的にはなりにくく、いずれはまた同じ問題が生じてしまうでしょう。しかしおそらく、エンジニア職を仕事で選んだということは、その他の事よりもエンジニア職というものが好き、あるいは、その特性を理解している場合は多いはずです。そして、毎日最も取り組んでいる事も技術的な活動になるでしょう。であれば、いかに技術を学ぶ事が面白いか、特定の技術の何が面白いのか、技術によって世界を変えられるかもしれない、そういう面白さを熱意を持って伝える事がまずは一番大事だと思っています。面白ければ人は自ら継続的に取り組み続けるものです。

僕は、意識的に会話の中でも「面白い」「いいね」「グレート」というような単語を連発するようにしています。そうしている内に、技術や学問は単純に知的好奇心を満たし、面白いものでもあるのだということを理解できるようになります。そういう意味では、面白さを伝える側の人間は、なぜ自分は面白いと思えているのか、なぜ朝方までコードを書き続けられるのか、その根本的な理由を言語化できるように整理しておくことが大事です。思いだけではだめで、きちんとそれを言語化し、相手の腑に落ちるレベルで語りかけないと面白さは伝わらないでしょう。根本的に面白いことを、仕事で活用するべく仕事内容と重なるように促す事が理想です。

仕事を任せ、成功体験をして頂く

次に、「仕事を任せ、成功体験をして頂く」ですが、技術のおもしろさを伝える中で、次はその技術によって仕事の中で成功体験をして頂くというのが大事です。というのも、特に若い間はなかなか仕事が任されずに、自分が貢献できている所は一部であり、なかなか成功体験を得られないパターンが多いと思います。また、任されたとしても、先輩エンジニアなどから細かすぎる指摘を受けすぎて、結局蓋を開けてみれば先輩のおかげで自分はダメだ、みたいな感覚になる場合も多いでしょう。

そこで、我々がやるべきことは、失敗を含めて仕事を任せることであり、その失敗が事業を傾けるレベルだあればちゃんと指摘し、失敗がある程度影響がありつつも、最終的には自分たちでカバーできるレベルであるかどうかを見定めることです。実際に、我々が重要視する以外のポイントを重要視するする人もいて、時にはその人が若かった場合にそれが「周りが見えていない」ように見えることもあります。でも実はそれが、我々の思い込みである場合もあり、それぞれのスタイルであり、また別解であることもあるのです。そのスタイルの違いを指摘してしまうと、可能性を潰し、促す側の成長機会すら奪い、成功体験をも潰すことになりかねません。そういった、スタイルを尊重する視点が必要だと思っています。

そうすると、失敗することもあるでしょうが、失敗したとしても我々がついているから気にするな、とも言えるし、失敗を認識することからこそ先輩の指摘よりも、自分の体験として自主的に自分の課題を認識することができるでしょう。失敗もまた、成功体験と言えるのです。成功した場合には、自主的にやりきったという本当の意味での成功体験を得られるのではないかと思います。失敗に寛容になり、その失敗を我々がフォローする、そして、成功体験を重ねた暁には君がフォローする側になれ、というようなサイクルを回せることが理想です。成功体験は基本的に気持ちいいものです。人は気持ち良いことは継続的に取り組むでしょう。

促す側がエンジニアの仕事の仕方として理想である姿を見せる

そして、3つ目の「促す側がエンジニアの仕事の仕方として理想である姿を見せる」が、上記の2つの要素を支える取り組みとしてとても大きく、面白さを伝えること、成功体験を促すことは、僕自身がエンジニアとして楽しみ、成功体験をしていることを継続的に実践しなければならないからです。あの人、なんか仕事をすごい楽しんでいるな、技術力もあるな、毎日ポケモンとかゲームばっかりしているけどなんか色々と仕事もこなしているな、なんか熱いな、あんな感じでやれば自分も楽しくなるかな、という事を言葉だけではなく行動で伝える必要があります。

運良く僕自身は、無理せず日頃からそれを実践できていることが、僕唯一の才能とも呼べるのかもしれませんが、そこについては苦もなくやれているだろうと思います。そのためにも、このようにエンジニア組織の中心にたって、自主的成長を促すためには、促す側(僕)は人の3倍努力しないといけないだろうと思いながら、まだできていない面もありますが、僕自身の熱意を感じてもらえるように、信頼してもらえるように、日々頑張っているところです。促す側の振る舞いから、情熱や目的をどれだけ周りと共有できるのか、これがとても大切でしょう。そして、その過程でのスタイルはその人達に任せ、独自のスタイルを醸成して欲しいわけです。かっこいいと思えることは真似したくなるもので、人の自主性につながります。

まとめ

ということで、エンジニア組織が自律的に成長するために、僕が意識して取り組んでいる3つの柱の中のひとつ「エンジニア個人が自主的に成長するように促す」についてお話しました。面白さを伝え、面白い事を仕事で活用できるように促し、成功体験できるように失敗を含めて仕事を任せ、その人のスタイルを醸成する、そのために促す側はそれを実践し続け、様々なスタイルを受け入れる寛容さと幅広い知識と判断が必要です。

技術力の高さはもとより、学ぶ事を楽しめている人たちがエンジニア組織の中心に立ち、周りの人たちに、技術的に成長することは面白く、成功体験は気持ちいいことだと伝えていく事こそが、エンジニア個人の自主的成長、ひいては、エンジニア組織の自律的成長につながっていくのではないのでしょうか。

そして、何かを達成した時に、泣いて笑って祝福し合えるような組織になれば、高校時代のクラブ活動などでそうであったように、あの時に戻らずとも、もう一度その感動的な体験を得られ、これからの人生がきっと楽しくなるだろうなとも思います。