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人間とウェブの未来

「ウェブの歴史は人類の歴史の繰り返し」という観点から色々勉強しています。

エンジニア・研究者とはどうあるべきか - 2016年振り返りと新生ペパボ福岡基盤チームの紹介

今年は2015年4月にペパボに入社して、1年目が終わり、2年目に突入する年でした。

hb.matsumoto-r.jp

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その中で、以下のように今年の抱負を書きました。

一方で、技術力の向上について明らかに努力を怠っていた面については反省し、技術力不足を悔しいと思う事に対して真剣に取り組みたいと思います。悔しくてもなんとなく放置してしまう、そうなってしまうと僕のようなエンジニアは絶対にダメになってしまいます。この悔しさこそが、自分自身を変える大きな力になると信じているからです。

去年の2015年は上記の2つのエントリで振り返り、色々あったけど結局技術的成長の努力が足りなかった、と締めくくりました。そして、今年はどうだったかというとやっぱり努力が足りない1年であったと言わざるを得ません。年末になると、必ず後悔と悔しさが湧き上がってきます。

エンジニアリング以外には沢山の取り組みを行いましたが、それでも僕はエンジニアであり研究者でもあります。他に沢山のことをやっているから、と自分に言い訳し、後悔や悔しさをごまかす程度の自己管理はできる年齢になってしまいましたが、そんな大人にはなりたくないと子供の頃からずっと思ってきたし、後悔や悔しさという感情にはちゃんと向き合っていくというのが、僕自分を継続的に成長させる唯一の方法だと、今も思っています。

ということで、いきなり感情溢れ出す文章を書いてしまいましたが、それでも良い事は沢山ありましたので色々振り返ってみたいと思います。

二男がうまれた

とても幸せなことです。とにかく健康に生まれ、健康に育って欲しい、と思っているので、今のところそのように育っていてとてもうれしいですし、とてもかわいいので、色々疲れている時に顔を見ているだけで心が洗われます。

妻には2人をずっと見てもらっていて、自分はそれなり出張を沢山したり夜も遅くなるので、とても負担をかけていてとても申し訳ない気持ちが常にあります。一方で、仕事や技術を今頑張らないとやばい、という自分優先の生まれながらに自由な感情もあって、日々その葛藤の中で悩みがあります。このあたりの感情や行動をもっと来年は整理して、良い家庭を築きたいと思います。

年間22回の口頭発表と8回の取材

ペパボ福岡にきたからには、福岡という比較的東京から離れた土地であっても、エンジニアリングとしても、研究としても、会社としても面白い事をやっているということを伝えたくて、自分や自社のプレゼンス向上のために、とにかく沢山の口頭発表や取材を行いました。基本的には、依頼があればすべて受けようと思っていると、ありがたいことに沢山の依頼を頂きまして、依頼だけで8割ぐらいの回数をこなしたように思います。

github.com

とにかく回数をこなしたというのはやはり大きく、ペパボや僕について沢山の人達に知ってもらえているというフィードバックも沢山得られましたし、僕の社外での活動が社内のエンジニアに響くこともあったり、社外コミュニティとの連携の機会やアカデミアでの立場の向上、取材の依頼などを頂く機会が増えて、これは2015年とは違うな、というようにはっきりと感じました。

既に記事が公開されているので言及しますが、河合塾様といった中高生向けへの記事だったり、リバネス様の大学生・大学院生向けへの記事であったり、昔から憧れでもあったINTERNET Watch様の取材記事などに掲載させていただいたのは、これまでリーチできていなかった領域まで手が届きだしている事を実感しました。

internet.watch.impress.co.jp

時には、約1週間の間に全く違う内容で、かつ、企業向けかアカデミア向けに分かれている内容を3回発表する事もあり、とにかく自分のインプットを文章だけでなく口頭発表としてアウトプットすることを心がけました。結果的に、これぐらいの頻度だったら今後もやれそうだな、という体験を得る事にもなり、自分の口頭発表における経験には非常にプラスになったように思えます。

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今では、だいたい与えられた時間のスライドを時間をはかることなく作ることができて、本番では時間や聴衆の属性を見ながら、スライドの発表内容や時間配分をリアルタイムで調整できるようになったので、聴衆にはその時に出せる最高のパフォーマンスで発表内容が伝えられるようになっていると感じています。その分、事前に口頭で練習することはあまり意味がなくなってきているので、今年は練習は一切やりませんでした。というのも、聴衆の属性が流動的である事が多くそういう方法を取っているだけで、そこが予め想定できるのであれば、属性にあった最高の内容をきちんと練習して本番に望み、最高のパフォーマンスを発揮するということは絶対にやりたいし、やるべきことだと思っています。

社外コミュニティとの連携強化

上述した積極的なプレゼンス向上活動によって、今年はこれまで実現できなかったような社外コミュニティとの連携が行えました。例えば、はてなさんと共同で開催できた技術イベントなどは、とにかく技術力の高いはてなさんに土地の共通性はあるとはいえ(京都と福岡)お誘い頂くという、エンジニアとしては大喜びするような機会を頂き最高でした。

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内容としては、やはりはてなさんの技術力は非常に高く、我々としてはもっと頑張らないといけないなという事を強く印象付けられたというのもあり、そういう意味でもまだまだこれからやっていくしかないという気持ちを参加者一同強くもつことができたのは、エンジニアとしてはある種ハッとさせられる機会でもありました。

また、その流れで id:y_uuki さんや、id:wtatsuru さん、id:tomomii さんとは非常に仲良くさせて頂き、弊社のイベントにお越しいただいた上に運営を手伝っていただけたり、もう感謝してもしきれないぐらい色々とお世話になりました。

さらに、id:y_uuki さんとは今年1年非常に仲良くさせていただいて、12月はなぜか毎週会って何かイベントごとをこなすようなぐらい、企業・アカデミア方面で関わることが多かったように思います。いつか、企業とアカデミアの両方の要素を含む新しい研究会みたいなものを一緒に作っていけるといいな、ぐらいに一方的に信頼しており、色々と今年は無茶をお願いしましたが、できるだけその無茶をちゃんと責任をもってサポートできるようにしたいと思います。

アカデミア方面でも、今年は情報処理学会のIOT研究会の運営委員として、すべての研究会やシンポジウムに参加し、査読や運営委員会への参加など、まずは運営委員の最初の一歩となるような活動を行いました。その中でも、安東先生や柏崎先生には猛烈に様々なサポートや行動指針のヒントを頂き、とてもお世話になりました。その中で、IPSJ-ONEという、情報系の日本の若手トップ研究者が発表するイベントに、ほとんどがアカデミアや大企業の研究所の中、ペパボの松本として参加し、登壇することができました。

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そして、今はそういう感謝の気持ちをまずはお返しするレベルでアカデミアでも活動していきたいと思う一方で、いつかはちゃんと、先生達が「すごいな」と思うレベルで活動し、若い人たちにその連鎖を引き継いでいく事こそが、本当の意味での恩返しになると思っているので、とにかくやっていくしかないなと思うのでありました。そして、いつかはあの日本のインターネット創成期における、エンジニアリングと研究力を高度に持つ技術者のコミュニティが同時多発的な創造を起こしていたような時代を、死ぬまでにもう一度作り上げ、体験したいものです。それが、僕のエンジニア・研究者個人としての現時点での目標かもしれません。

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来年は、研究会Program Committee memberもやりますので、まずはそういう所から徐々に活動を広げていきたいと思っています。

ペパボ研究所創設

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今年の7月に、事業を差別化できる技術を醸成する組織を目指す最初の一歩として、ペパボ研究所を創設しました。 id:antipop さんとは、ずっとこの話をしてきて、ある面談の中で、

あ「研究所、どうしますかね」

ま「器を作りましょう」

あ「そうですね、やりましょう」

と、超意訳するとそんな感じで創設が決まりました。我々の中で、ペパボ研究所が目指すビジョンやコンセプトは決まっていたし、後はメンバーの数の問題があったのですが、あんちぽさんとの議論の中で、技術基盤チームも最初はたった1人からはじまって、そういう意味では器を作るところからはじまったのですが、そこにちゃんと目指す方向性と熱意があれば、きっと人が集まるであろうという自信があったからです。そして、現時点でも来年は、さらに強くなることがわかっていますので、ペパボ研究所を組織としても、研究開発の実績としても、そして、その技術によってペパボサービスがより良くなるように努めていきたいと思います。

また、今年は博士論文を執筆し、予備審査まで行いました。来年は無事本審査を迎え、3月には情報学博士(京都大学)となれるように頑張る次第です。

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新生福岡基盤チーム

今年自分が最も実感したのは、福岡で基盤チーム的に動いてくれているメンバーの圧倒的成長であることは間違いありません。これまでどうしても、東京にいる基盤チームのメンバーに色々とサポート頂きながら、福岡のエンジニアリング全般を進めてきたのですが、いよいよ福岡でも基盤チームのように動くメンバーが強くなり、ようやく福岡でも基盤チームの活動を現場のエンジニアを近くで見ながら、より密に動けるようになってきたように思います。

今一緒に基盤的に働いているメンバーは、 @udzura@pyama86@linyows@monochromeganeであり、彼らの今年の圧倒的成長が僕の悔しさを多いに刺激してきます。

@udzura さんは、C言語をほとんど触っていない状況から、圧倒的スピードでC言語を習得し、今では「リエントラントじゃないじゃん」とか「システムコールで提供されてるなら簡単ですね」、「matsumoto_rって、リエントラントです?」とか言って、今や隣で日々ひたすらコードを書き続け、いつかはシステムコールラッパーを全て書きあげてしまうのではないかという勢いで業務に励んでいます。Haconiwaという、コンテナエンジンだけではなく、あらたなシステムコールラッパーとしてのコンセプトもあるソフトウェアを、ほんの数ヶ月で書き上げ、半年後にはRubyKaigiで発表していました。「CRubyの方のRuby?それはもうわからないんで別の人に聞いてください」という発言が最も効果的に活きるエンジニアです。

@pyama86 さんは、僕が入社した頃には、横断的にあらゆる業務を担当し、何か止まっているのを見つけたら戦車のように全ての業務を完遂させ、彼が通った後は自動化しか残らない、みたいな勢いで仕事をしていました。そして、その成果が認められ、今年CTLというホスティング事業部を統括するエンジニアのトップになってからは、戦車に羽が生えだし、更に機動力と目線の高さを備え、遠くの見えない北方領土あたりに業務を見つけたら、羽の生えた戦車はバサバサとそこまで移動して、バババババとキレイにして、またバサバサと福岡あたりに帰ってきて戦車活動を行う、そんなエンジニアになっています。

@linyows さんは、「ちょっと明日からあのチームにいってきます、じゃっ」という発言と共に、大きなプロジェクトを抱えつつも、技術的に困っているチームに颯爽と現れ、圧倒的プロジェクトコントロールと正確無比な開発技術と開発プロセスを駆使して、無理だと思われていたスケジュールであっても、スケジュール通り、かつ、ほとんど問題の起きない高品質な状態に仕上げ、「じゃあ帰ります」といって基盤チームに戻ってきて、また、次の困難なプロジェクトの助けに備えて、日々自分のスキルを高め続けている、そんなエンジニアです。そういう意味では、直接的に自分の技術力を最も業務方面に活用・貢献しているエンジニアといえます。

@monochromegane さんは、minneという、社内でも圧倒的成長しているプロダクトを、圧倒的プロジェクト管理能力とエンジニアリング技術、そして、冷静な目の奥に見える灼熱の情熱で作り上げているエンジニアです。これまで、技術基盤チームでも作るのは難しいと渋っていたログ活用基盤を、一人でホワイトボードにアーキテクチャを書いて睨みつけ、気がついたら全てをほぼ一人で設計して実装し、ログ活用基盤として導入して実践していました。それだけではとどまらず、文系出身にも関わらず一から数学の勉強をやり直し、社内でも率先して機械学習やアカデミックな手法を学び、ログ活用基盤を機械学習としての基盤としても活用した上で、これまた気がつくと、社内で随一の機械学習の知見をもつに至っています。その上で、GitHubのスター数1800を超えるthe_platinum_searcherの開発者でもあり、Go界隈でも超有名なエンジニアです。

そんな彼らですが、何よりもすごいのは、そういったエンジニアリングだけでなく、エンジニア組織のことを圧倒的当事者意識で常に考えているからです。

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このような環境で自分が仕事できているのは、幸せでしかありません。そして、互いに意識し合い、@pyama86 さんになんて飲み会のたびに「まつもとさん倒しますから」って言われます。でも、そういう関係で、そういう気持ちをお互いに出せる関係はとても健全で信頼しあっているからこそ言えるのだと思うのです。だからこそ、彼らを見ていると、自身の技術的成長に対する努力は足りておらず、自分の立場に甘んじており、年末には後悔と悔しさが湧き上がってくるわけです。

まとめ

今年は自分の技術力成長に対する努力が足りない、という出だしからはじめたものの、それ以外の所ではいくつかの成長がありました。子供もうまれ、プレゼンスも向上し、社外コミュニティとの連携もできるようになり、新しい組織も立ち上がって、所属するチームも強くなり、来年がとにかく楽しみです。

ですが、僕はインターネットに関わるエンジニアであり研究者です。

エンジニアにはもちろん様々な観点で必要なスキルがありますが、エンジニア・研究者というからには、幅広いコンピュータ・サイエンスの知識を身につけ、専門性の高い技術にも取り組み、そして、コードを書いて自社のサービスで実践して価値を最大化し、ひいては、社会の技術コミュニティに対して還元し、次の世代へと引き継いでいかなければなりません。たとえ、それ以外に貢献していたとしても、仕事ができるというだけでも足りません。

自分の技術力を高めて、アーキテクチャやコードによって事業を差別化し、サービス価値を最大化していくべきであって、その方向性から目をそらし「自分は他の所で頑張っているから〜」と後悔や悔しさをうやむやにしてはいけないのです。エンジニア・研究者は、技術的に成長していく中で、ただ普通に、悔しい気持ちに向き合って、行動を起こすことによってその悔しさを回収していけば良い、そう思うわけです。

来年こそは、技術的に成長のあった1年であったと言えるようになりたいものです。